アート・批評と紹介

映画『線は、僕を描く』タイアップの水墨画展 心を癒やす、あの香り

レビュー随想
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

木村 邦彦をフォローする

「線は、僕を描く at 百段階段」、ホテル雅叙園東京(東京・目黒)

ホテル雅叙園東京(東京・目黒)で「線は、僕を描く at 百段階段 ~色彩空間で観る水墨画の世界~」が開催されています。墨の香りで満たされた独特の美術体験ができそうです。

 水墨画をテーマにした青春映画『線は、僕を描く』(小泉 徳宏監督)が2022年10月から公開されています。小説から始まり、漫画化、そして映画化された人気作品です。

 映画公開にともない、ホテル雅叙園東京(東京・目黒)では「線は、僕を描く at 百段階段 ~色彩空間で観る水墨画の世界~」が開催されています。私がかつてある仕事でお世話になった墨絵作家の竹田繭香さん(https://www.ateliercocon.net/)が、この映画に作品を提供しているというお話を聞きました。竹田さんは繊細な水墨画を描く作家さんであると同時に、実務では政治経済にも通じている大変に格好いい方です。

 そこでホテル雅叙園東京に足を運んでみました。開催されているのは、園内の木造建築「百段階段」(東京都指定有形文化財)。階段(99段)に沿って畳の部屋があり、映画で使用された作品や水墨画の技法コーナーなどが展示されています。

東京都指定有形文化財「百段階段」(実際は99段)

 「百段階段」はたまにしか歩かない在宅ワーカーにとって、適度な運動を提供してくれる装置にほかなりません。会場は土足厳禁です。素足で板の間や畳の上を歩きます。

 息を切らして階段をのぼっていますと、ついつい畳の会場に寝転びたくなる衝動を覚えます。そこはグッとこらえなければなりません(会場からつまみだされますので)。美術鑑賞と運動不足を解消できるまたとない機会と前向きにとらえるのが大切です。

 水墨画は、油絵のように簡単に修正できる技法ではないと思われます。修正液の痕跡はなかろうかと、意地悪な目でくまなく見てみました。当然のことながら、そのような痕跡はやはり発見できません。水墨画からは勢いと集中力が伝わってきます。

中央のガラスケースでは水墨画技法の解説がある

映画のシーンを再現した展示も

 百段階段でたどり着く最後の部屋には、鑑賞者が思い思いを筆ペンで書くコーナーが用意されていました。わたくしも一筆したためました。

鑑賞者が思い思いを筆ペンで書くコーナーも

筆者がしたためた一筆

 会場では終始、心が静まっているのを感じました。その理由は畳が敷かれた和室を満たす墨の香りにほかなりません。墨の香りは独特の癒しがあります。油絵のような毒々しい有機溶剤を使わないので、健康を害することもないでしょう。水墨画の作品づくりにおきましても、家族やご近所へ迷惑をかける心配も少ないのだろうと感じます。

 美術を体験し心癒やされ、運動不足も解消できる……。百段階段のイベントにも定期的に足を運ぼうと思っています。

「線は、僕を描くat百段階段 ~色彩空間で観る水墨画の世界~」

スケジュール 2022年10月1日(土)~2022年11月27日(日)
時間 11:00~18:00(会期中無休)
休館日 イベントにより異なる
入場料 一般 1200円、学生 600円、未就学児 無料、障害者手帳提示と付き添い1名 優待料金
展覧会URL https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/senwabokuoegaku
会場 ホテル雅叙園東京
住所 〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-8-1
電話番号 03-3491-4111
https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event

タイトルとURLをコピーしました