読書

かとう・ゆうじんさんが勧めてくれたカミュ『異邦人』のこと

人生(LIFE)
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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カミュの『異邦人』を勧められました。読めば「1つのコミュニティーでしか生きられない人間の苦しみ」が分かるという。

 去年、オンライン哲学サークルで熱心な読書家であるかとう・ゆうじんさんと出会いました。かとうさんは30代で、日本人とロシア人のハーフです。6歳の時に日本に来て、小学校2日目から不登校に。長い期間を引きこもりとして過ごし、最近まで友達がいなかったと話してくれました。

 現在は高卒認定試験を経て、肉体労働をしながら放送大学で心理学を勉強しているそうです。彼は当事者意識を持っているので、心理学は彼に向いている分野のように感じました。

 かとうさんは忖度せずに自分の思いを率直に伝えます。日本語がネイティブでなかったり、公教育を受けていなかったりしたことが影響しているかもしれません。

 分かりやすい反面、ネットでは人との摩擦を生むことがあります。いくつかのオンラインコミュニティーで出禁の憂き目も経験。儀礼やマナーの習得を自らの課題とつつも、居場所が1箇所だけなのは高リスクと感じているようです。

 先日、彼からカミュの『異邦人』を勧められました。「カミュの『異邦人』を読むと、1つのコミュニティーでしか生きられない人間の苦しみが分かるようになる」と言っていました。

 疎外されたり居心地が悪かったりしても、選択肢が限られていることがあります。国や学校、会社、家族などが該当するでしょう。私は「ディアスポラ(故郷喪失者)」という言葉を思い浮かべました。心理的な安全を感じない場所で生きる人間の苦しみとは、このような状況にあるのかもしれないと感じました。

 かとうさんは歴史や文学、哲学方面に強く、家には本がたくさんあるそうです。学校に行かず、本ばかり読んでいたとのこと。さらに話を聞いてみると、日本の著名な政治家や思想家と遠縁で、父親は人文系の出版社を経営し、母親はロシア文学を教える大学講師だったとのこと。私の家には国語辞典すらなかったので、彼の家とは大違いです。環境は身を助けてくれるものだと思いました。

 ちなみに、昨日は私がホストを務めたマキャベリ『君主論』のオンライン読書会で、かとうさんもフラリと現れて参加してくれました。面白かったです。

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