さるやまさるぞう著 『男を追いつめた罪』被告は美女、原告は野獣

学びと読書
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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【美人で仕事ができる弁護士の想像図(イラスト:キムラクニヒコ)】

【美人で仕事ができる弁護士の想像図(イラスト:キムラクニヒコ)】

私はいま「ヨセフアンドレオン」社のKindle本にハマっている。ハードボイルド作家の中川文人氏が営む編集プロダクション。同社の刊行物は読者を現実世界の外へ誘う手引き書のよう。

たとえば日本学生運動のメッカ、外堀大学(これって法政のことですよね…)を舞台にした愛と革命の物語黒ヘル戦記。「法政大学11億円詐欺事件」の真相にも触れるサムライ・コミュニズム。風俗嬢と「最後までやる」方法をまるで修行僧が指南するかのように淡々と説くAI開発者が教える 男の夢を実現する方法など。(現在、Kindle Unlimitedでも読むことが可能です)

同社の発行物には宿敵から命を狙われたり、失恋したりといった描写も見られ、ロマンと同時に哀愁、孤独を漂わせているところが味わい深い。

さるやまさるぞう著 『男を追いつめた罪』に
エッチな描写はなかった…

同社の、さるやまさるぞう著 男を追いつめた罪の表紙には「被告は美女 原告は野獣」のコピーがある。悩ましいポーズで若い美女が寝そべっている。

どのようなロマンス小説なのだろうと思った。ところが、どのページにもエッチな描写は見当たらない。人間模様を軽妙に描いたショートショートだった。

表題作「男を追いつめた罪」では、弁護士同士が織りなす恋の駆け引きが描かれている。思い込みが強い男性と、現実的な思考の持ち主である女性…。軽いどんでん返しも随所に仕掛けられ飽きさせない。良い意味で裏切られた。

「大きなおうち」は中年男性と18歳少女との同棲生活のお話。男と少女の会話はかみあっていないようで、かみあっているのが面白い。作者の優しさを感じさせる。

才能に触れることは感動とともに、自分のなかに眠っているアイデアも刺激してくれる。女性も手に取りやすい表紙なら、同社の読者層はさらに広がることだろう。今後の刊行物も楽しみに注目したい。

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