Grouperの魅力……The Man Who Died In His Boat に癒やされる

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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音のこだま

 Grouperは、ポートランドを拠点に活動する女性アーティストLiz Harrisによるプロジェクト。

 彼女たちの音楽は、ファズで歪んだようなエレクトリックギター、もしくは深い音のこだま(ディレイとリバーブ)で成り立っています。神秘的な女性の声が、聖歌隊のように響き渡る。古くて大きな家屋、建物の奥深いところから聞こえてくるかのよう。懐かしい気持ちさせられる魅力があります。

劣化するサウンドの魅力

 Grouperの音楽は、カセットテープやアナログディレイを使って重ね録りされたかのようです。「劣化」する音には、温かみがある。BrianEnoの古典的な作品「Discreet Music」に近い魅力があります。

 劣化なくコピーが当たり前であるデジタルの時代。劣化する音に、私たちは新しい魅力を再発見している時代にいる。

「癒やしの音楽」という言葉は「馬から落馬」

 「癒やしの音楽」という言葉は「馬から落馬」のように、同じ言葉の繰り返しを感じる。音楽そのものが、癒やしなのだから。

 歪んでない音とか、静かな音楽とか、長調の曲とか、ポジティブすぎる世界観とか、あまりにもスピリチュアルすぎる宇宙観とか……。必ずしも一般的に言われている「癒やしの音楽」が、個々人の癒やしに繋がらない。

 Grouperはノイズ、アンビエントドローン、シューゲイザー……。さまざまなジャンルにまたがる。ノイジーで、クリアーなサウンドではないにも関わらず、静寂な世界へ誘う。

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