鉄拳「振り子」秀逸バージョン、muse『Exogenesis: Symphony Part 3』

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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  鉄拳のアニメーション「振り子」にはいくつかのバージョンがあります。添えられている曲が、museのExogenesis: Symphony Part 3 (Redemption)や、fumikaのEndless Roadです。Endless Roadが添えられている新しいバージョンは、女性のまなざしから歌われた曲で、アニメーションで示されている物語観とはずれていると感じました。私は、museの曲がバージョンが、やはり優れていると思います。

愚か者の購いを歌う「Exogenesis: Symphony Part 3 (Redemption)」

 Exogenesis: Symphony Part 3 (Redemption)(エクソジェネシス(脱出創世記):交響曲第3部(あがない))は、とても美しい曲です。イントロのピアノの旋律だけでも、クラシックになりうる威厳があります。会社帰りの電車で「振り子」を観たときは、涙腺をゆるんでしまい、感情を鎮めるのに大変な苦労をしました。私は、たしかに「振り子」の物語に感動したと言えますが、Exogenesis: Symphony Part 3 (Redemption)の曲の美しさにも感動しました。絵と音楽の展開が、絶妙にあっていました。「あがない」というタイトルからも、曲の世界は、罪深い愚か者の男の姿を代弁していたようにも感じます。

良妻賢母?を歌うウェディングソングに……

 いまyoutubeで公開されている「振り子」は、「【閲覧注意】 鉄拳公認! もうひとつの 振り子meets 「Endless Road(マイナビウエディングCMソング)」」というタイトルになっています。ウェディングソング……。museの曲が添えられていたバージョンの方は、youtubeからは、ほとんど削除されているようです。

 「振り子」は実写版の映画制作も予定されているので、大人の事情が絡んでいるのかもしれませんね。Endless Roadという曲は、女性のまなざしから歌われた曲で、曲自体の善し悪しというよりも、「振り子」の世界観とはずれていると感じました。私は、museの曲が添えられていたバージョンが優れていると思います。

愚かさに気づかせるリアルな寓話

 鉄拳が描いた「振り子」の物語は、リアルな世界だと思いました。秀逸なのは、先に死んでしまうのが、妻ではなく、夫であるということ。もしも、夫が長生きして、妻が先に先立つ話だったらなら、感動はしないでしょう。ロクな生き方もできず、ロクな死に方もしなかった男の人生には、私たち自身の姿を重ね合わせてみる価値があります。良質の教訓が含まれていると思う。

 私たちの心身を支えている大切な存在を、蔑ろにしていないだろうか。すぐさまに省みて、改心し、幸せを育むべきだと気づかせる寓話だと感じます。

 

 Muse – Exogenesis Symphony Part 3: Redemption (Video) from Muse on Vimeo.

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