妻が月の土地を買うと言った

随想
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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妻が月の土地を買うと言った。妻は堅実でしっかり者なので、耳を疑った。しかし、やっぱり月の土地なのだという。

「大丈夫、怪しいところでないから」

たしかに「月の土地」を販売するECサイトには「通信販売法に基づく表記」があった。そのサイトによれば月の土地は国家が所有してはならないが、個人が所有することを禁じていないと説明している。あるアメリカ人がこの盲点をついて土地の販売を始めたのだそうだ。

妻が買ったのは1エーカーで3000円。

「その土地は普通の不動産資産のように売買できる市場があるの?」と私は妻に聞いてみた。

妻はウーンとうなってしまった(※)。

誰のものでもないものが、この地球上にはいくつかある。例えば南極。神聖な地が、売買の対象となっている気がした。

もっとも、この話は生真面目にけしからんと考える種類のものではないようだ。月の土地を売っているのはデニス・ホープ氏という米国人で、彼は月の土地とは誰のものかを問題提起をしているようにも見える。考えても見れば、米国、旧ソ連、中国等が月面調査を図っていて、近い将来、まるで南極のように月を巡って領土争い、資源の争奪も起きかねない。こうしたリスクをユーモアを交えて、議論のネタを提供しているようにも見えた。

我が家では月に1エーカーの土地を持っている……ことになっている。どうやってそこに行けばいいのだろうか?

※追記、フリマ(メルカリ)で売買されているようです。

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